取り組み事例

ニューツーリズム商品を企画販売するプレイヤーを、
実践型の研修を通して多数育成しました。

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ニューツーリズム商品企画販売研修

富士山や温泉など日本屈指の観光資源をもつ静岡県。しかし、近年では宿泊客数の減少が著しく、観光客の満足度向上につながる「ニューツーリズム」への取り組みが欠かせません。そこで、各地域で自立的に観光商品を企画販売できるプレイヤーを育成するため、5年間にわたって「ニューツーリズム商品企画販売研修」を実施しました。

静岡県

ニューツーリズム
商品企画販売研修

株式会社ティー・ゲート

事業の概要と価値

静岡県の観光躍進に欠かせない「また来たくなる観光地づくり」。

古くから全国屈指の観光地として人気を博してきた静岡県。しかし近年では、観光の柱となっていた伊豆地域で、宿泊客数が平成3年の約2,000万人からほぼ半減。これは、団体旅行客の減少が主な要因と考えられています。

一方で好調なのが、日帰り(観光レクリエーション)客数です。大道芸ワールドカップin静岡や御殿場アウトレット、そして富士山の世界遺産登録などの影響によって、富士地域・駿河地域への日帰り客数が大幅に増えています。また、リピーター率が全国平均より高いのも特長です。このように、観光ニーズの変遷は、静岡県が抱える観光地にも大きな影響をもたらしています。

そこで静岡県では、今後も成長が期待できる取り組みとして、「首都圏・中京圏から近い」「リピーター率が高い」という当県ならではの強みを生かし、「1泊や日帰りで訪れた観光客に、リピートしてもらう仕組みづくり」を推進。旅行会社が企画する従来の「発地型観光」だけでなく、地元が地元の魅力を掘り起こして企画する「ニューツーリズム(着地型観光)」を取り入れ、静岡のより深い魅力に触れられる満足度の高い観光地づくりに力を注いでいます。

そんななか、「ニューツーリズム商品の企画販売に携わっていける人を発掘・育成したい」という思いから、平成20年から5年間にわたり「ニューツーリズム商品企画販売研修」を実施。平成20~22年と24年には、ティー・ゲートが研修事業を請け負いました。

  • 伊豆地域の宿泊客数は平成3年から半減

    伊豆地域の宿泊客数は平成3年から半減

  • 静岡観光のリピーター率は全国平均より高い

    静岡観光のリピーター率は全国平均より高い

  • 多業種の研修生が、各地域から集いました

    多業種の研修生が、各地域から集いました

事業成功のポイント

フィールドワークを含む実践型研修と、
企画コンテストを実施。

ニューツーリズム商品企画研修では、ニューツーリズムの意義や商品企画のポイントなどを学ぶ講義からはじまり、実際に資源調査を体験できるフィールドワーク、それを踏まえた商品企画造成、静岡県の体験観光情報ポータルサイト『しず旅』への商品登録までを実施。ニューツーリズムのノウハウを、より実践的に身につけられる研修内容としました。

また平成24年度には、パブリシティやWEBを活用したプロモーション手法を学ぶ「広報スキルアップ研修」も連動。ニューツーリズムの商品企画からロモーションまでを、総合的に理解できる研修にすることができました。

さらに、当初は研修の一環として行っていたにも関わらず、静岡県から高く評価され、後に研修から切り離して開催することになったのが「ニューツーリズム商品企画コンテスト」です。応募された企画のなかから入賞作品を選定し、それらを『しず旅』に掲載。近畿日本ツーリストグループの日帰り旅行予約サイト『旅の発見』からもリンクを貼り、実際に集客を行なったのです。

社会的地位のある審査員の方々から講評をいただけるうえに、入賞者は多くのメディアに取り上げられてスターダムにのしあがれる。このように、応募者にとって非常にモチベーションの高まるコンテストを実現することができました。

平成24年度のコンテストには、約40点もの作品が集まりました。研修生以外の方からも応募がありましたが、本選に出場した11作品の大半は研修生の企画。研修を通して、ニューツーリズムならではの着眼点や、そのマーケティング・プロモーション手法などが身についた結果と言えるでしょう。

  • フィールドワークで実際の資源調査を体験

    フィールドワークで実際の資源調査を体験

  • グループごとに商品企画に取り組む研修生

    グループごとに商品企画に取り組む研修生

  • コンテスト本選では研修生が企画をプレゼン

    コンテスト本選では研修生が企画をプレゼン

事業の効果と今後の展望

多くのプレイヤーを育成し、ニューツーリズムの基盤を構築。

静岡県内のさまざまな地域から、毎年約80名の研修生が集ったニューツーリズム商品企画研修。行政・観光協会・ホテル・農協・鉄道会社など幅広い業種の方々が受講し、各地域でニューツーリズム商品を企画販売するプレイヤーを多数育成することができました。

平成25年度に実施した調査によれば、「地域の多様な主体が参画した観光地づくりに取り組む事業主体数」は15事業体。平成20年度以前よりも大幅に増えており、研修の成果として一定の評価を得ています。

また、人材育成の面だけでなく、「人と人のつながり」を生みだしたことも研修の大きな成果と言えます。研修時に出会った者同士が、情報を共有し合い、刺激し合いながら、各地域のニューツーリズムを盛り上げていくことこそが、これからの静岡県の観光躍進には不可欠なのです。

  • 平成24年度コンテストの最優秀賞。川根本町の湖にある無人島にカヤックでわたるツアー

    平成24年度コンテストの最優秀賞。川根本町の湖にある無人島にカヤックでわたるツアー

  • 平成23年度コンテストの最優秀賞。香貫山ハイクでトワイライトCafe&沼津の港めしツアー

    平成23年度コンテストの最優秀賞。香貫山ハイクでトワイライトCafe&沼津の港めしツアー

地域からの声

研修で生まれた「つながり」が、
今後の大きな財産に。

静岡県文化・観光部 観光交流局 観光政策課
企画班班長 室伏 学 氏

静岡県文化・観光部 観光交流局 観光政策課 企画班班長 室伏 学 氏

地元が地元の魅力を掘り起こし、観光商品として企画販売するニューツーリズム。普段「当たり前」と感じている地元の魅力を発掘することは、想像以上に難しいものです。そのノウハウをもつプレイヤーを、各地域で増やしていく基盤ができたこと。それが、本研修の大きな成果だと思います。
また、個別の地域ごとでプロモーションをかけていても、ニューツーリズムの情報は観光客まで届きづらいもの。個々のプレイヤーをつなぎ、観光客に一元的に提供する仕組み「DMO(Destination Management Organization)」をつくることができたのも、研修を通して多くの方々とのつながりができたおかげだと思います。
ティー・ゲートによる研修やコンテストは、講師・審査員の人選のよさも光っていました。ニューツーリズムの権威として知られる和歌山大学の大澤健教授をはじめ、関東・東北じゃらんの副編集長、観光経済新聞社やクラブツーリズムの静岡県担当者、タレントのマリ・クリスティーヌさんなど、近畿日本ツーリストグループならではのネットワークを駆使して、社内外から幅広い有識者の方々をご紹介いただきました。運営はもちろん、当日の司会進行についてもクオリティが高く、研修生や来場者からも高い評価をいただくことができました。
全県での研修で一定の成果を得た今、これからは個々の地域に寄りそった形でプレイヤー育成やプロモーション強化を行っていきたいと考えています。今後もティー・ゲートのサポートを得ながら、静岡県のニューツーリズムを活性化させていきたいと思います。

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