取り組み事例

観光客の急増によるさまざまな課題を、交通対策で解消。
安心・安全を提供し、より価値ある観光スポットへ。

印刷用PDF

国史跡 竹田城跡

雲海に浮かぶ幻想的な様から「天空の城」と呼ばれ、近年急激に注目度が高まっている「竹田城跡」。しかし、急増する観光客に対応が追い付かず、「城跡の損傷」「周辺道路の渋滞」「地元住民生活への支障」などの問題に直面していました。そこで、持続的に誘客できる観光地として定着させるための交通対策や、城跡保全のための環境整備を進めています。

兵庫県朝来市

国史跡 竹田城跡

近畿日本ツーリスト株式会社

事業の概要と価値

突如押し寄せた、想定を超える観光客。

竹田城跡は、廃城から約400年、堂々たる石垣をほぼ当時のまま今に伝える全国屈指の山城遺構です。春には見事な桜が、秋から冬にかけての早朝には朝霧が作りだす雲海が楽しめる隠れた名所として、長年ファンから静かに愛されてきました。しかし、この数年間で状況は一変。映画やテレビドラマのロケ地となり、また「日本のマチュピチュ」としてメディアに紹介されたことをきっかけに観光客が急増したのです。

5年前は年間で約3万人だった観光客数は、2013年には約50万人に膨らみ、さらに2014年には100万人を超える勢いで増えつづけています。もともと多くの観光客の受け入れを想定していなかった竹田城跡周辺では、駐車場不足が起因となり渋滞や違法駐車が発生。また城跡自身の傷みや破壊も進行し、その対応に追われる状況でした。

「数時間もの渋滞に巻き込まれてはせっかくの観光客が離れてしまう」「人の多さに城跡が耐えられず、保全も追いつかない」「市の職員が休日を返上して対応しているが、長く続けられる状況ではない」。こうした課題を少しでも解決すること、そして持続的に観光客を受け入れられる観光の整備を目的として、近畿日本ツーリストが観光バスの予約制導入を提案。2014年5月に観光バスの予約センターを開設し、同年9月からは観光バス予約システムの運営が開始されました。

  • メディアの影響で、溢れかえる観光客

    メディアの影響で、溢れかえる観光客

  • 人の多さに耐えられず、壊れてしまう石垣

    人の多さに耐えられず、壊れてしまう石垣

事業の進行状況

町全体で人の流れをコントロールする、独自のノウハウを発揮。

観光客が急激に増えることなど、経験する機会はほとんどありません。その分、近畿日本ツーリストは旅行会社としての本業の枠を超え、大きなイベントなどで交通輸送対策を請け負うことがあります。たとえば、奈良県で開催された平城遷都1300年祭や、奈良・吉野山の花見シーズンにおける観光バス予約センター運営などです。そのノウハウがあれば、朝来市様のお役に立てると確信しました。

実地調査を繰り返し、市との協議を重ねた末に導入したのが「観光バスの事前予約制」と「乗降所待機所の有料化」です。いくつかの道が混むだけなら、道を増やしたり信号の間隔を変えたりすればいいのですが、町全体に人が増えてしまっているため、やはり町全体で人の流れをコントロールする必要があります。そこで一つの手法として、無制限に訪れていた観光バスを対象とした施策を実施したのです。

観光バスで来場した観光客は、「山城の郷」の駐車場に車を停め、その先は徒歩かチャーターバスに乗り換えて竹田城跡へ登ることになります。山城の郷には観光バスを10台しか駐車できません。そこで、この駐車場では乗り降りだけをしてもらい、見学している間は別の場所にバスを移動させる仕組みにしました。また、乗降場所の台数も限りがあるため、到着時間の平準化を図ることで、数十台ものバスが一気に押し寄せて駐車場がパンクする事態を回避しました。

  • 山の中腹にある「山城の郷」の駐車場。竹田城跡へ行くには、ここで大型の観光バスから中型バスに乗り換える

  • 山の中腹にある「山城の郷」の駐車場。竹田城跡へ行くには、ここで大型の観光バスから中型バスに乗り換える

  • 山の中腹にある「山城の郷」の駐車場。竹田城跡へ行くには、ここで大型の観光バスから中型バスに乗り換える

  • 山の中腹にある「山城の郷」の駐車場。竹田城跡へ行くには、ここで大型の観光バスから中型バスに乗り換える

今後の展望

一過性のブームで終わらせることなく、
息の長い観光スポットへ。

いずれの施策も、2014年から実施したばかり。その効果を量るにはまだ時間がかかりますが、渋滞のために土日のツアー造成を断念していた旅行会社が、ツアー造成を始めるなど、すでに状況改善の兆候は見られています。また、5月の予約受付開始と同時に、雲海シーズンの9~12月分がわずか3日間で完売するなど、まずは順調な滑り出しと言えそうです。「いま苦労しながら作り上げている仕組みは、他地域でも参考にしていただけるはず。竹田城跡の誘客事業が、全国から知られる模範モデルとなればうれしいです」と、当事業には朝来市様も期待を寄せてくださっています。

また、竹田城跡ブームを一過性のもので終わらせることなく、息の長い観光スポットとして定着させることが、朝来市様との共通の目的です。近畿日本ツーリストは引き続き、予約センター・駐車場運営に留まらず、その他のさまざまな領域でも当事業の円滑な推進に向けた仕組みづくりやコンサルティングに力を注いでいきたいと考えています。

  • 竹田城跡の観覧料の徴収、石垣の保全、駅前の活性化などを、多面的な対策を行っていく必要がある

  • 竹田城跡の観覧料の徴収、石垣の保全、駅前の活性化などを、多面的な対策を行っていく必要がある

  • 竹田城跡の観覧料の徴収、石垣の保全、駅前の活性化などを、多面的な対策を行っていく必要がある

  • 竹田城跡の観覧料の徴収、石垣の保全、駅前の活性化などを、多面的な対策を行っていく必要がある

天空に浮かぶ、全国屈指の山城遺構「竹田城跡」

天空に浮かぶ、全国屈指の山城遺構「竹田城跡」

1400年代中盤に但馬守護の山名持豊により築城された竹田城。後に豊臣秀吉の弟・秀長が城代となったことでも知られています。自然の石と石の声を聞きながら積むと言われる「穴太流石積み技法」による石垣は、織田信長の安土城とも同じ技術。関ヶ原の戦いの後に廃城となりましたが、400年を経た今でも、その堂々とした石垣がほぼ当時のまま見るものを圧倒しています。平成18年には「日本名城100選」にも選出されました。
また、秋から冬にかけての早朝、朝霧につつまれる「雲海」を山頂から楽しめることでも有名です。その姿は、まるで雲のなかに浮かぶ城のよう。近年では「天空の城」「日本のマチュピチュ」として広く知られるようになりました。一方、春には見事な桜の名所としても注目されています。

PAGE TOP