クラブツーリズムは台東区と観光分野での連携協定を締結し、社員が出向して地域の新たな観光資源を発掘、ツアー化。「サステナブル・ツーリズム」に根ざした台東区の魅力発信を行なっています。
東京都台東区
クラブツーリズム株式会社
事業の概要と価値
浅草と上野という国際的な観光資源をもつ台東区では、コロナ以前は特定のエリアにインバウンド客が集中し、過密による混雑やゴミ問題など地元に悪影響も出ていました。
コロナ禍を機に、より広く深く地域に根ざした持続可能な観光事業を展開できないか。それが区の課題ともなっていたのです。
「観光を通じて地域に活力を」という理念を目指すクラブツーリズムは、2021年11月、台東区と観光分野における連携協定を結び、旅づくりのプロを区役所に出向させて新たな観光商品開発に取り組んでいます。
これまで培ってきた観光開発や地域連携、マッチングやPR、集客のノウハウを活用し、行政だけでは気づきにくい視点から地域の人や街、文化や伝統の魅力を再発見・再構築し、ツアーというかたちで広く発信しているのです。
事業成功のポイント
クラブツーリズムから台東区文化産業観光部観光課へ出向中の林和樹氏は言います。
「皮革や和装といった伝統工芸職人、銭湯、旧吉原遊郭など区内には地域に根づいた有形無形の文化財がたくさんあります。その魅力をいかに再発見しどうアピールすれば集客につながるのか。地域も潤うのか。地元の方がたと意見交換を重ね、理解をいただきながらツアーをつくっています」
これまで実現したのは、旧吉原遊郭をめぐる旅、徳川ゆかりの場所をめぐる旅、職人の仕事場見学、東武浅草駅裏側探検、銭湯撮影ツアーなどなど。若い層や女性一人客など内外から多くの参加者を集めました。
「職人さんや銭湯など、どのツアーも地元の〈人〉にスポットをあてています。吉原ツアーは地元商店街の会長が案内役を務め、徳川家ツアーでは地元出身噺家の落語を鑑賞する。訪ねるだけでなく、地域の人と出会い、ふれあい、学ぶ。ツアーはそんな場なんです」
ともに地域観光資源の開発と磨き上げを行なっている観光課の江畑州恒観光担当係長がつけ加えます。
「これまでどう伝え、どう楽しんでもらうかわからなかった地域の魅力の〈受け皿〉を旅行会社の視点で共創できたことは大きな前進。各ツアー体験は台東ファンを増やす有効な手だてとなっています」
ともに観光資源の掘り起こしと商品化を推進する台東区観光課の江畑州恒観光担当係長（左）とクラブツーリズムから出向中の林和樹氏。
事業の効果と今後の展望
「また、最近台東区に引っ越してきた方がたも参加することで自分の住む土地の魅力を知るきっかけとなり、同時に、古くからの住民とつながり相互理解を深める架け橋にも。ツアーはそんな役割も担っているんです」
ツアーが区の魅力を具現化し、「職人」や「銭湯」といった台東区の新しいキーワードが増えてゆくこと。多くの人が参加しファンが広がること。地域住民の交流や相互理解、地元愛の醸成に役立つこと。ツアーの収益が地域に還元されサステナブルなものとして継続してゆくこと。「そうした好循環、観光を通じた地域活性化とまちづくりを目指します」
台東区文化産業観光部 観光課長／平林正明氏
たとえば吉原ツアーは女性の参加者も多く、銭湯撮影ツアーは若い人たちが銭湯文化にふれるとてもいい機会でした。それだけお客様のいろんな「知りたい欲求」がある。それに気づかせてくれたのが旅行会社の視点から造成するツアーの数々でした。文化、歴史、街並み、食、人。新たな視点から掘り下げれば区内に観光資源はまだまだたくさんあります。
コロナが去ればインバウンドは必ず復活する。その際、まず戻ってくるのは若い層と富裕層です。現在展開しているツアーはその受け入れ環境整備につながり、区内の広域で集客が望めるでしょう。
台東区が発表した「観光復活に向けた方針」に基づいて観光資源を高付加価値化し、さらには教育旅行やMICE、インセンティブツアーなど幅広く台東区の魅力を発信してゆきたいと考えています。
台東区文化産業観光部観光課のみなさん。
旧吉原遊郭ツアーでは地元商店街会長が案内役に。深くわかりやすい解説で女性の参加者にも好評を博しました。
各ツアーはテレビや新聞など多くのメディアに取り上げられました。
台東区の銭湯数は人口比で都内随一。多くの個性あふれる銭湯は貴重な文化財でもあります。
皮革、組み紐、貴金属など区内には伝統工芸職人も数多く、ツアーは職人たちにも刺激となり地場産業の活性化にも寄与しています。
