取り組み事例

北海道東部の二次交通の整備拡充を目的とした
実証実験で周遊観光バスを運行。

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ひがし北海道広域バス

北海道東部の広域を北・南ふたつのルートで周遊する観光バスを運行し、点在する観光資源をめぐって内外の個人観光客を取り込む実証実験に、近畿日本ツーリスト北海道とクラブツーリズムが全面的に連携し企画・販売など運営の全般を行いました。

広域観光周遊ルート形成促進事業
「アジアの宝 悠久の自然美への道
ひがし北・海・道」
(広域観光周遊ルート周遊バス運行事業)

【管理運営業務】
国土交通省北海道運輸局・(公社)北海道観光推進機構
(株)近畿日本ツーリスト北海道・クラブツーリズム(株)

事業の概要と価値

北海道東部を横断する周遊バスを運行。

 国内外から北海道を訪れる旅行者は多いものの、ほとんどが札幌を中心とした道央エリアに集中しています。もっと北海道の隅々まで足を運んでもらいたい。「アジアの宝 悠久の自然美への道 ひがし北・海・道」として国土交通大臣が認定した富良野地域、層雲峡地域、十勝地域、知床地域、釧路地域を周遊する観光ルートを活かし、利便性の高い交通アクセスを確立して誘客できないか…その実証実験事業が2017年度秋季と冬季に行われました。
 札幌を起点に知床ウトロまで富良野、旭山動物園、層雲峡温泉、温根湯温泉、網走をめぐる北ルート、富良野、帯広・十勝川温泉、阿寒湖温泉、弟子屈・摩周湖、川湯温泉をめぐる南ルート、の2ルートで周遊観光バスを運行し、とくに冬季のアクセスを確保して個人旅行客を取り込もうという取り組みです。

  • 札幌を起点に北海道東部の観光スポットを周遊する定期バスを運行。

事業成功のポイント

日本人・外国人旅行者の双方を取り込む。

 実証実験は秋季(2017年9月1日~10月31日)と冬季(12月9日~2018年3月15日)において、近畿日本ツーリスト北海道とクラブツーリズムとが全面的に連携して取り組み、集客と運営を行いました。
 バスは1日一便、予約制で1名催行、朝に出発して夕刻まで、あらかじめ定められたルートを定時で走り、乗客は途中の観光地で乗り降りしたり数時間の観光をして再乗車したりすることができます。
 集客を行ったのは北海道でバスツアーを10年以上手掛け、商品の3割以上をオンラインで募集しているクラブツーリズム。ポイントは、自社カタログの「旅の友」や新聞広告などでの国内向け募集に加え、外国人旅行者へ向け英文でインバウンド向けのツアーを販売している「YOKOSO Japan Tour」サイトを活用し、幅広い告知を機動性高く展開したこと。日本人旅行者と外国人旅行者を同時に集め、双方が混乗する混載型のツアーバス・スタイルで乗客数を確保したのです。
 さらに、募集には、他の旅行会社への代売を担当する株式会社観光販売システムズ(近鉄グループ・三重交通の関連会社)も加わり、販売会社の垣根を越えて乗客を取り込み、秋季の実験では3,241人の利用客を獲得。うち20%以上が外国人旅行者でした。

  • YOKOSO Japan Tour のサイトでも募集を行い、外国人個人旅行者を取り込みました。

  • 南と北の2 ルートを設定し、各エリアの主要観光スポットを巡ります。

事業の効果と今後の展望

冬季の新たな動脈ルートとして大きな期待。

 また、近畿日本ツーリスト北海道はルートの運営を担当しながら、海外の旅行会社へ道東の魅力と当周遊バスを強くアピールしました。
 今回の実証実験の最終実績は、秋季・冬季合計で8000 名の集客目標に対して8169名と前年を大きく上回り(前年比203%)目標を達成しました。冬の道東は網走の流氷や層雲峡の氷瀑まつりなど多くの自然観光や資源が存在しますが、積雪でレンタカーの移動は困難。当周遊バスの存在価値はさらに高くなり、二次交通の脆弱な北海道の新たな動脈ルートとして大きな期待がかけられています。

  • 網走の流氷、釧路のタンチョウ、十勝のジュエリーアイスなど冬季は自然観光や資源にあふれていますが、二次交通の弱さが課題でした。

「自走化」を検証する事業として国も大きな期待をかけています。

国土交通省 北海道運輸局 観光部 観光地域振興課/長谷川巧 課長

 北海道は広大ですが、二次交通は脆弱といえます。北海道の隅々まで訪日外国人観光客に訪れてもらうためには、観光地から観光地へ個人旅行客が利用できる交通手段が不可欠です。広域周遊バスを運行することによって、どれだけ利便性と利用客が見込めるのかを調査するのが今回の実証実験です。
 秋の運行では一定の集客を獲得することができました。しかし、最終の目標は、この広域周遊バスが自走化して成り立ってゆくこと。そのために越えるべき課題も少なくありません。この実験をとおして、ルートや運行日数、発着地など柔軟に見直してゆく必要を感じています。
 地域のめざすのは多くの観光客に北海道を広く「周遊」してもらうこと。このバス運行を、そのために欠かせぬ二次交通システムの先駆けとして期待をしています。

クラブツーリズムのインバウンドツアー YOKOSO Japan Tour

YOKOSO Japan Tourは、クラブツーリズムが国内で一般に募集しているツアーの中から訪日外国人旅行者向けコースを厳選したもの。インバウンド向け専用英語サイト「Club Tourism YOKOSO Japan Tour」(http://www.yokoso-japan,jp)で、東京、名古屋、関西、札幌、福岡出発のバスツアーなど常時200コース以上を外国人旅行者へ向けて募集しています。
また、外国人専用ツアーだけでなく、訪日外国人と日本人が同じツアーに参加する「混乗型ツアー」も用意しています。

地域からの声

各地域へ足を延ばすための
「観光大動脈ルート」と位置づけたい。

公益社団法人 北海道観光振興機構 地域支援事業部広域観光周遊ルート支援グループ/
福田勝志 リーダー 吉井直行 次長

 我々は、このバスを「観光大動脈バス」と位置づけています。
 広域に点在する観光ポイントを巡り、そこからは枝葉の地域交通をつかってさらにいろいろな場所を訪ねてもらう。動脈として各地の地域交通とうまくつながりながら、観光の行動半径を大きく広げられるバスとなるはずです。
 十勝川のジュエリーアイスや野付の氷平線、流氷ウォークなど冬の道東エリアには、ならではの自然美がたくさんありますが、これまでアクセスが不便でした。このバスが新たな動脈となることを期待しています。

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