取り組み事例

漁協食堂を賑わいの中心に。
「生しらす丼」が呼び込む新たな観光名所。

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富士山しらす街道

年1回のイベントで「おいしい」と大好評だった地元の生しらす丼。これを観光の目玉にできないか。漁協に常設のしらす丼食堂を開き、全国から人を呼び込もう。毎日獲れたての生しらすをお客様にふるまおう。富士市と富士山観光交流ビューロー、田子の浦漁協が三位一体となって進めた新名物「生しらす丼」での地域振興プロジェクト。

富士山しらす街道

富士市・富士山観光交流ビューロー・
田子の浦漁業協同組合

事業の概要と価値

「生しらす」で人を呼びたい

静岡県富士市、田子の浦漁港では、毎朝、名産生しらすの水揚げが終わるとセリ場がきれいに掃除され、椅子とテーブルが並べられる-「田子の浦漁協食堂」の開店です。

田子の浦は日本でも有数の高級しらすで有名ですが、しらすは極度に足が早いため、これまで水揚げのほとんどは加工されて市場へ流れていました。毎年9月に1日だけ開催される「しらす祭り」は早朝から長い列ができるほどの大人気で、駐車場には多くの他県ナンバーも。お目当てはこの日だけ一般に供される新鮮な「生しらす丼」で、普段は食べられない獲れたての味が大評判を呼んだのでした。

この人気を地域おこしに活用できないか。「生しらす」を集客の核として賑わいを起こすしくみがつくれないか…そんな思いを抱いた田子の浦漁協の組合長を中心に、富士市と富士山観光交流ビューローの三者が手を組み、かつては「ダンプ街道」と呼ばれ、観光とはほとんど無縁だった田子の浦エリアに漁協食堂を中心に、「富士山しらす街道」として観光化プロジェクトが始まったのは平成21年のことでした。

事業成功のポイント

漁協のセリ場に常設食堂を設置

プロジェクトは、富士山観光交流ビューローに派遣されていた近畿日本ツーリストの観光プロデューサーが積極的に関与してスタートしました。

まずは味が自慢の生しらすや釜揚げしらすをいつでも気軽に食べてもらおうと、漁協に期待される安く、おいしく、ボリュームがある「しらす丼」をメニュー化して常設の漁協食堂をオープン。当初は、漁協青年部が調理や配膳をおこない、セリ場にテーブルと椅子を並べたシンプルな食堂でした。
そのうち、リアルな漁港の雰囲気や潮風に吹かれ海を見ながら食すプリプリの活きのいい味が話題を呼び、さまざまなメディアにも取り上げられました。しらす漁師たちにも協力してもらい、それまで休漁していた日曜日も出漁して、その朝、水揚げされた新鮮なしらすをお客様の多い日曜日や祝日にも提供できる体制を整えたのです。

富士山を望み、しらす加工販売店が点在する付近の街道も、圧倒的に知名度がありインターネット検索件数が多い富士山を冠して「富士山しらす街道」と新たに命名。ロードサインの設置やイラストマップ作成により、「田子の浦のしらすはおいしい!」のイメージの浸透を図って全国からの一般客を漁協食堂へ呼び込みました。

事業の効果と今後の展望

ツアーバスが毎日。その4倍の個人客が食堂へ。

漁協食堂は、手つかずの観光スポットとして、新しい仕向け地を求める全国の旅行会社にも注目され、毎年4月1日から10月31日までの営業期間中、クラブツーリズムはじめ各社ツアーバスを毎日のように受け入れています。平成25年度は8,500人以上のツアー客が訪れ、その4倍を越える数の個人客もここでしらす丼を味わいました。

漁協の素朴なロケーションを生かしながら、
(1)満足を感じさせるサービスの指導
(2)旅行会社セールス
(3)パンフレット作成
(4)メディアへ情報提供や新企画立案
(5)しらすイベントの開催
(6)団体の予約調整
(7)地元事業者の組織化
をおこない、しらすのおいしさの秘密を説明するパネル表示など旅行会社の視点でプロデュースをすることにより、田子の浦漁協食堂は新しい魅力を放つ観光名所として確実に存在感を大きくしつつあります。

地域からの声

漁協を観光の核として
大きな地域おこしへつなげたい

田子の浦漁業協同組合/外山 廣文 組合長

田子の浦漁業協同組合/外山 廣文 組合長

漁協という元来観光とはあまり縁のない場所から、「しらす丼」を中心とした賑わいの場をつくってゆけないか。そんな私の思いに富士市と富士山観光交流ビューローの賛同をもらって進めてきたプロジェクトです。漁協食堂のために漁師は日曜日も出漁、地元のしらす料理店が交代で食堂の調理を担当するなど、みんなが力を合わせることで、おいしいしらすを安く、たっぷり、多くの人に食べてもらえるしくみができあがりました。
漁協食堂を核としながら、しらす漁の船上見学や試食など魅力的な観光の目玉をつくり「富士山しらす街道」に人を呼びたいと考えています。

  • 漁協食堂にはツアーバスや個人客など多くの人が。平日200食、休日300食、5月の連休には800食のしらす丼が食される。

    漁協食堂にはツアーバスや個人客など多くの人が。平日200食、休日300食、5月の連休には800食のしらす丼が食される。

  • しらすを傷つけない「一艘曳き」という独特の漁法で獲れたしらすは船上で氷漬けにされ、鮮度を保ったまま漁協食堂へ。

    しらすを傷つけない「一艘曳き」という独特の漁法で獲れたしらすは船上で氷漬けにされ、鮮度を保ったまま漁協食堂へ。

  • たっぷりと生しらすの乗った新鮮な丼は650円とお手頃な価格。釜揚げしらす丼も人気だ。

    たっぷりと生しらすの乗った新鮮な丼は650円とお手頃な価格。釜揚げしらす丼も人気だ。

  • 漁協、しらす漁師、地元料理店が手を取り合って漁協食堂を運営する。

    漁協、しらす漁師、地元料理店が手を取り合って漁協食堂を運営する。

  • 漁協のスペースをそのまま利用した食堂は目の前が海。潮風が吹き雰囲気は良い。

    漁協のスペースをそのまま利用した食堂は目の前が海。潮風が吹き雰囲気は良い。

  • 年1回の「しらす祭り」では長い行列が。「待たずにいつでもおいしい生しらすを」という思いから漁協食堂は始まった。

    年1回の「しらす祭り」では長い行列が。「待たずにいつでもおいしい生しらすを」という思いから漁協食堂は始まった。

写真提供(一社)富士山観光交流ビューロー

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